発酵と腐敗の違い② ~伝統食品はSDGsの先駆け?~

猛暑の夏、流石に食欲も無くなって来てしまいますね。

 

食べ物が腐りやすい季節に合わせ、前回は「発酵と腐敗」について書かせていただきましたが、今回はその続きになります。

 

少しおさらいをすると、前回、発酵も腐敗も同じ現象で、私たちが食べられれば発酵ですし、食べられなければ腐敗とお伝えしました。

 

 さて、日本で一番くさい食べ物と言えば、「くさや」を思い浮かべる方は多いかもしれません。伊豆諸島の名産品としても知られる魚の干物ですね。一般的に、干物を作るとき、魚を塩水に浸け込んでから干します。しかし、昔、伊豆諸島では塩は貴重品だったので、やむを得ず塩水を交換せずに、繰り返し使い続けた結果、くさや汁が生まれたそうです。

 

 そして、世界で一番くさい食べ物と言えば、スウェーデンの「シュールストレミング」を思い浮かべる方が多いかもしれません。ニシンを塩水に漬け込みますが、ここでも昔は塩が貴重品だったそうで、塩を節約するために、やむを得ず薄い塩水に漬けた結果、シュールストレミングが生まれたそうです。

 

 筆者はどちらも食べたことがありますが、どちらもニオイがキツいので、たまたま周囲に居合わせた人には迷惑をかけたようです(笑)。私にとっては「発酵」でしたが、周囲にとっては「腐敗」だったのかもしれません。

 

 日本にも、世界にも、さまざまな発酵食品(腐敗食品?)があります。おそらく、その多くは「おいしいものを作ろう」と思って開発されたのではなく、「やむを得ない事情」で作ったものが、イロイロな偶然が重なって今日まで生き残ったのだと思います。

 

 私たちのご先祖たちが「地元の資源をフル活用して、何とか食事を確保しよう」「できれば長く保管できるようにしよう、保存性を高めよう」と工夫しまくった結果、イロイロな発酵食品、伝統食品が生まれたのだと思います。そして偶然にも「タベモトで食べたけど、美味しかった」「なぜか栄養価が上がった」「何か健康への機能性がありそう」といった副次的効果が見つかったものが、今日まで生き残ったのではないでしょうか?

 

 そう考えると、発酵食品、伝統食品は、ズバリ「SDGsそのもの」だと思いませんか? 地元の資源をフル活用して食品として生かすことは、貧困や飢えをなくすことにつながります。保存性を高められたら、食品ロスは減ります。

 

 実はSDGsの考え方は、大昔からあったのかもしれませんね。

 

 ちなみにシュールストレミングすら体験した著者が、今までで一番くさいと思った食品は都内某所の豚骨ラーメン屋です(←美味しいし、今でも時々行きますよ)。

 

それでは、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 
 
 

ATP・迅速検査研究会 理事

(元月刊HACCP副編集長・元月刊フードケミカル副編集長)

立石 亘

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